ぼくは本当に哀れな少年なんです めったに身の上話はしませんが
約束なんてみんな うそと笑談みたいなものです それでも人は聞きたいと思うことだけには耳を傾けて あとは知らん顔なんですね
開墾地のようなボクシング会場に立つボクサーは おカネめあてのファイター闘志です
自分をリングに沈めたグローブのひと突きひと突き その記憶をたぐり 怒りと恥ずかしさに声をあげ
”もう止めるんだ もう止めるんだ”と叫ぶまで 自分を切り刻んでいくんです
– ポール・サイモン作 ”ボクサー”より –
まったく凄い曲を作るもんだ
僕が小学生の頃 夢中になった漫画「カリフォルニア物語/吉田秋生」に明らかにモハメド・アリをイメージした黒人青年が登場する
主人公のヒースが信頼した数少ない人間として描かれている
徴兵されてベトナムへ行った彼が脱走したという噂がヒースの耳にも届く
ヒースは裏切られたと思い 彼が植えたヒマワリを全部引き抜いてしまう
「種を少しだけ残して あとは公園のリスにあげること
残した種は また植えること
一度切りじゃ可哀想だろ ヒース」
カリフォルニアを出て ニューヨークで暮らすようになったヒースは
苦労を重ねるうちに 彼のことを理解していく
モハメド・アリ
イスラム教改宗前の名はカシアス・クレイ
元WBA/WBC統一世界ヘビー級王者
マルコム・Xと出会い その思想に共鳴したんだ
ベトナム戦争徴兵拒否
それによって 米国政府と長年にわたって争うことになる
最終的には無罪を勝ち取るが
彼の発言と行動は 政府や保守派の脅威だった為に
王座剥奪 試合禁止などの圧力が加えられる
引退後はパーキンソン病と闘っていた
彼は言われていたように 決してパンチドランカーなんかじゃなかったよ
6月3日
彼は逝った
向こうでも
蝶のように舞い 蜂のように刺す
その身のこなしで みんなを驚かせていることだろう
そんなわけで 僕のヒーローの一人
ただのボクサーではない
彼はファイターだった